山縣悌三郎 (1859-1940) は教育家。教科書の編纂、翻訳のほか、多くの雑誌を発行した。
自伝「児孫の為めに余の生涯を語る」 (1987) がある。
山縣が普及舎から出版した著作には、自身の名前が入った独自の検印紙が貼られているものがある。
確認できたのは6点、全て国立国会図書館デジタルコレクション公開本。出版年順に記す。
[例1] 山縣悌三郎編述「教授之得失」。洋装、1冊。
標題紙は "山縣悌三郎編述 | 教育叢書 教授之得失 完 | 明治十九年十二月 東京下谷區練塀町十四番地 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治十九年十二月七日版權免許 定價金三十錢
同 年同 月 出版
編述兼出版人 滋賀縣士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
發兌所 教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に印刷された枠内に貼られていて、横長、目打ちがある。
交差したサーベルと羽ペンが描かれ、上部に "T. YAMAGATA"、下部に "NO." と印刷されていて、
"343." と手書きされている。また、左部に "A" とある。割印は "山縣悌三郎" の丸印。
図柄は "ペンは剣よりも強し (The pen is mighter than the sword.)" を意味するものだと思う。
[例2] 山縣悌三郎譯述「進化要論」。洋装、1冊。
標題紙は "ヘッケル氏原著 | 山縣悌三郎譯述 | 進化要論 第一 | 明治二十年一月 東京下谷區練塀町拾四番地 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治十九年十一月三十日版權免許 定價金四十錢
同 二十年一月 出版
譯述兼出版人 滋賀縣士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
發兌所 教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に貼られていて、手書き番号は "785."、左部に "A" とある。割印は同じ。
官報1031号 (1886.12.6) の版權免許書目廣告に拠れば "進化要論 第一第二 中本二册" が明治19年11月30日付で、
官報1246号 (1887.8.23) の版權所有並免許書目に拠れば "進化要論 第二 中本一册" が明治20年8月18日付で免許が下りている。
「教育報知」52号 (1887.1) の普及舎の広告には "進化要論 全十册第一出版" とあるものの、続巻の出版を確認できない。
当時の出版広告等にも見当たらず、所蔵している機関もないので、未刊に終わっているのではないかと思う。
[例3] 山縣悌三郎譯修「ペスタロッチ氏ノ主義及ビ應用」。洋装、1冊。
標題紙は "ジヨセフ、ペーン氏著 | 山縣悌三郎譯修 | 教育叢書 ペスタロッチ氏ノ主義及ビ應用 完 | 明治二十年二月 東京下谷區練塀町拾四番地 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治二十年一月二十八日版權免許
仝 年二月 出版
譯者兼出版人 滋賀縣士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に印刷された枠内に貼られていて、手書き数字は "3989."、左部の "A" は無い。割印は同じ。
[例4] 山縣悌三郎譯述「教育哲學史」。洋装、1冊。
標題紙は "ベン子ット氏著 | 山縣悌三郎譯述 | 教育叢書 教育哲學史 完 | 明治二十年十月 東京下谷區練塀町十四番地 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治二十年九月二十日版權免許(教育哲學史)定價金三拾錢
同 二十年十月 出版
譯補兼出版人 東京府士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
發兌所 教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に印刷された枠内に貼られていて、手書き数字は "21952."、左部の "A" は無い。割印は同じ。
[例5] 山縣悌三郎纂述「男女淘汰論」。洋装、1冊。
標題紙は "山縣悌三郎纂述 | 男女淘汰論 完 | 明治二十年十一月 教育書專賣所 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治二十年九月十四日版權免許(男女淘汰論)定價金五十五錢
同 年十一月 出版
纂述兼出版人 東京府士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
發兌所 教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に印刷された枠内に貼られていて、手書き番号は "24916."、左部の "A" は無い。割印は同じ。
[例6] 山縣悌三郎譯修「フレーブェル氏小傳及幼稚園」。洋装、1冊。
標題紙は "ジョセフ、ぺーン原著 山縣悌三郎譯修 | 教育叢書 フレーブェル氏小傳及幼稚園 完 | 明治二十年十二月 東京下谷區練塀町十四番地 普及舎"。
奥付は以下の通り。
明治二十年十月六日版權免許(フレーベェル幼稚園)定價金三拾錢
同 年十二月 出版
譯修兼出版人 東京府士族 山縣悌三郎 東京府下北豐島郡上駒込村十九番地
出版人 熊本縣士族 辻敬之 東京下谷區練塀町十四番地
發兌所 教育書專賣所 普及舎 東京下谷區練塀町十四番地
検印紙は奥付上部に印刷された枠内に貼られていて、手書き番号は "23742."、左部の "A" は無い。割印は同じ。
手書きで番号が付されているのが大きな特徴だと思う。
例5と6を除けば出版年に従って数字が大きくなるので、通番になっているようだ。
多くの現物を当たることができれば、出版数の詳細等が確認できるかもしれない。
例1と2に見える "A" の文字は微妙にずれているので、後から押印されているようだが何を意味するのかわからない。
なお、山縣が訳し普及舎から明治21年2月に出版された「理科通志」の第4巻の奥付には、
山縣の検印紙に合わせたと思われる横長枠が印刷されているが、国立国会図書館デジタルコレクション公開本には検印紙は貼られていない。
また、明治23年5月20日に出版された同第8巻の奥付にも同形の枠があるが、普及舎の検印紙 が貼られている。
アドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2026.01.20]
「教授之得失」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/810040]
「進化要論」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/832192]
「ペスタロッチ氏ノ主義及ビ應用」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/809262]
「教育哲學史」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/808553]
「男女淘汰論」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/798965]
「フレーブェル氏小傳及幼稚園」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/809246]
[2026.02.10 記]
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