末広鉄腸 (本名:重恭, 1849-1896) は明治時代の新聞記者、政治小説家。衆議院議員も務めた。
彼の政治小説 「雪中梅 上編」 を調査した。調査したのは再版(第二版)。
上編の標題紙は赤地、飾り枠内に "末廣鐡膓居士著 | 政治小説 雪中梅 上編 | 東亰 博文堂蔵版"、飾り枠の外下部に "第二版" とある。
奥付は下記の通り。
明治十九年七月廿七日版權免許
同 年八月廿七日出版 (定價金六十錢)
同 年十一月三十日再版御届
著者 愛媛縣士族 末廣重恭 東京麹町區内幸町二丁目壹番地
出版兼製本人 東京府平民 博文堂 原田庄左衛門 同日本橋區久松町十五番地 [印]
發兌人 文海堂 松村九兵衛 大坂南區心齋橋一丁目 [印]
同 曨曦堂 梅原龜七 大坂東區備後町四丁目
末広重恭の肩書は、"著者兼出版人" と印刷された上に、"著者" と印刷された紙片を貼付して訂正されている。
上部の空白部に 博文堂の検印紙
が貼られていて、発兌人である "松村之印" の角印が押され、"検印" の丸印が割印されている。
検印紙は約 27 × 32 mm.、版面は黄橙色で 24.5 × 29.5 mm.、おそらく凹版、四隅には裁断の目安となる十字が印刷されていて、四辺に目打がある。
楕円枠の内側に "博文堂藏版證"、上部に原田庄左衛門の頭文字である "庄"、下部に右違い鷹の羽紋、
楕円枠の中には "明治一六年十一月以後 製本以此印紙爲眞版証" とあり、外側四隅には右上から時計回りに、旭日、菊、稲穂、三日月が描かれている。
博文堂の検印紙には、これと同形同大、意匠も同じで緑色と紺色の色違いが確認できるが、使い分けがされたのかはよく判らない。
印字されている通り、明治16年11月以降の図書に使用されたはずだが、使用例を現物で確認できたものはこれが一番古い。
近代教科書デジタルアーカイブでは、塚原苔園著 「小學農業書 上巻」
(再版校刻. 明治17年10月21日四刻御届) に貼付されているのが確認できる。
なお、博文堂の検印紙は遅くとも明治24年には
別のデザイン
(㠀田三郎著 「開國始末」. 再版, 1891. より)に変更されていて、これも緑、青、黄色のものがある。
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[近代教科書デジタルアーカイブリンク先 https://nierlib.nier.go.jp/lib/database/KINDAI/EG00006519/900066226.pdf: 最終閲覧確認 2025.07.05]
[2025.07.15 記]
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