初期検印紙調査メモ. 石村貞一編輯「明治新𠜇 國史畧」(東生書館, 明治9年版権免許)

石村貞一 (号:桐陰, 1839-1919)は教部省、陸軍省を経て陸軍中央幼年学校教授。
調査したのは石村貞一編輯「明治新𠜇 國史畧」。["𠜇"が表示できない環境があるかも知れません。刻の異体字です。]
和装、7巻7冊。第一冊見返しの表示は "石村貞一編輯 | 明治新𠜇 國史畧 | 版權免許 明治九年十月廿四日 東生書舘藏"。
第7冊奥付は以下の通り。
版權免許 明治九年十月廾四日
編輯人 山口縣平民 石村貞一 [印 石邨之印] 第三大區一小區麹町平河町五丁目十四番地
出版人 東京府平民 東生龜治郎 [印 東生書房] 第一大區十四小區通旅籠町二番地
奥付の印影は全て刷られたもの。版心には "萬巻樓藏" とある。
検印紙 は第一冊、見返しの右上部に貼られている。26 × 26 mm.、版面 25.5 × 25.5 mm.、目打無し、凹版印刷と思われる。
暗緑色単色、机の置かれた中国風の東屋が描かれ、左上に "桐隂書屋"、四辺中央に "証" の字がある。
楕円の割印(判読できない。××書×之章?)が押されている。
初版には出版年が書かれていないが、同書第二版 (1880) の巻末にある書肆萬巻樓主人の附言に拠れば、刊行は "明治十年三月" である。

「国史略」は、東生書館から少なくとも第四版まで出版されていて、後版には標題右下に版表示があり、刊記も異なる。
現物を確認できていないが、第二版、第三版には図柄のデザインがやや異なる桐隂書屋の検印紙が、
第四版には図柄のない "桐隂書屋之章" の検印紙が貼られていて、共に "査過" の楕円印が割印されているようだ。
調査本は版表示が無く初版のはずだが、国会図書館デジタルコレクションで公開されているものと比較すると見返しや序文が異なっている。
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国会図書館本 第一冊
見返し: 石村貞一編輯 | 明治新𠜇 國史略 | 版權免許 明治九年十月廾四日 東生書館藏"。右上に検印紙と割印。
丁1-5: 序。敬宇中邨正直撰、万菴市河三兼書。日付は明治10年3月。
丁1-3: 序。南摩綱紀識、桂洲伊藤信平書。 日付は明治10年3月4日。
丁1-2: 序。瓊江何禮之識、半嶺聞書。日付は明治10年1月。
丁1-2: 自序。日付は紀元2537年1月24日。
以下本文。
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京大図書館本 第一冊
見返し: 石村貞一編輯 | 明治新𠜇 國史畧 | 版權免許 明治九年十月廿四日 東生書舘藏"。
"明" は日へんではなく目へん、見返し全体の書体も異なっている。飾り枠や、右上にある検印紙と割印は同じ。
丁1-4: 序。瓊江何禮之識。日付は同じ。
丁1-3: 序。敬宇中邨正直撰。日付は同じ。
丁1-3: 序。南摩綱紀識。 日付は同じ。
丁1-2: 自序。日付は同じ。
以下本文。本文は同一。
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国会図書館本の序は、書家の筆になり順番も異なっている。どちらが先に刊行されたのか、詳細はわからない。

国会図書館デジタルコレクション「國史略」 のアドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2025.07.30]
國史略 第一冊 扉. [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/1080727/1/2]

[2025.08.03 記]
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