初期検印紙調査メモ. 河島敬藏譯「春情浮世の夢」(耕文舎, 明治19年5月出版)

河島敬藏 (1859-1935) は明治時代の英文学者、翻訳家。和歌山県出身。
調査したのは河島敬藏譯「春情浮世の夢」。シェークスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」の最初の邦訳書として知られる。
洋装本。標題紙の表示は "沙比阿原著 露妙樹利戯曲 | 河島敬藏譯 | 瀧本誠一校 | 春情浮世の夢 | 紀伊和歌山 | 耕文舎"。
"露妙樹利"には"ロミョージュリー"とルビが振られている。奥付は以下の通り。
明治十九年一月廿三日版權免許
同 年五月出版 (定價金壹圓)
飜譯者 和歌山縣士族 河島敬藏 和歌山區吹上組西徒町拾五番地
校閲者 愛媛縣士族 瀧本誠一 大坂東區横堀二丁目拾九番地寄留
出版人 和歌山縣士族 赤城友次郎 和歌山區新町南組新中通三丁目廿一番地
検印紙 は奥付上部に貼られている。32 × 31 mm.、版面 27 × 27 mm.、目打無し、活版と思われる。
暗緑色単色、飾り枠があり、上部に"版權所有"、右に"和歌山"、左に"赤城" とあり、中央空白部に丸印 "耕文舎主之印" がある。
出版人の赤城友次郎(せきじょう ともじろう, 1842-1911)は、安井息軒の門で学び、和歌山紡績株式会社、和歌山電気軌道株式会社などを発起し、
和歌山県議会議員も務めた人物。耕文舎は彼が興した洋式印刷所だが、出版物は少なく、検印紙の他の使用例を確認できない。

[2025.08.06 記]
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