江馬春熈(えま しゅんき, 1854-1901)は明治時代の医者。岐阜出身、諱は芬[かおる]。
父元齢に蘭学を学び、福島県立須賀川病院長などを務め、後に神田今川町で開業し、区会議員も務めた。
名前の漢字表記を "春熙" とする文献が多い。経歴の参考とした「岐阜県蘭学医学歴史散歩」(岐阜県医師会, 1983) も "熙" としている。
"熙"(unicode:7199) の字は "煕"(unicode:7155) や、左上部を "巨" とする等の異体字がある。
江馬生前の著作でも表記に揺れがあり、どれが本来なのか確認できない。
ただ、「通俗亜米利加史 : 插画平假名附」 初編 (學知軒, 1887) の(おそらく自筆と思われる)自序には、
"江馬芬春熈識" と署名されている(正確には "熈" の右部分は "熙" に見える)ので、ここでは "熈"(unicode:7188) を使用しておく。
国立国会図書館デジタルコレクションでは、江馬の複数の著作に検印紙が確認できる。
確認したのは 「脚氣發明論 治方篇」.
標題紙の表示は "江馬春熈著 | 脚氣發明論 治方篇 全 | 學知軒藏版"。奥付は下記の通り。
明治一二年四月九日版權免許 定價三拾五錢
著述兼出版人 岐阜縣士族美濃大垣 江馬春熙 當時寄留東京神田平永町壹番地
検印紙は序の丁2ウラに貼られている。方形、飾り枠内に輪状に "YE YE YE YE YE YE YE YE" とあり、
その中に朝日、地球儀、馬が描かれている。割印はない。江馬を "YE" と馬の絵で表しているのだと思う。
他に、以下の著作で同じ検印紙が確認できる。
「原病學通論駁解」(學知軒, 1880)。緒言末に貼付、割印なし。
「對症備考 上」(江馬春熈, 1881)。見返しに貼付、割印(判読不能)あり。
「一真虎列刺論」(學知軒, 1882)。奥付に上下逆で貼付、割印なし。
江馬は、医学書以外にもいくつかの著作があり、明治20-23年には學知軒から「通俗亜米利加史 : 插画平假名附」10編10冊を出している。
国立国会図書館デジタルコレクションで確認する限り、初編から五編までは "學知軒藏版証" と書かれた検印紙が標題紙(初編は見返し)に貼られ、割印がある。
江馬の検印紙は貼付されていないが、同書初編の表紙には大きく、朝日、地球儀、馬が描かれている。
アメリカ史とは無関係な絵で、江馬の過去の著作の検印紙を知らないと、何の事だかわからないだろう。
検印紙のデザインが學知軒に変わったため、江馬が自身のこだわりのある意匠を表紙に残したのだと思う。
国会図書館デジタルコレクションの各資料アドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2025.08.05]
脚氣發明論 治方篇. [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/834748]
原病學通論駁解. [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/833590]
對症備考 上. [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/834430. ログイン必要]
一真虎列刺論 [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/835103]
通俗亜米利加史 初編. [リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/776791]
[2025.08.10 記]
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