三潴謙三が訳校兼出版人である「國政醫論」に検印紙が貼られている。
確認したのは国立国会図書館デジタルコレクション公開本。洋装本、現在1冊に製本されているが、元々は3部3冊として出版されたもので、
石川光昭の「『國政醫論』について」(東京醫事新誌 ; 3000, p. 81-83)には、"青表紙、四六版、仮綴の小冊子三巻" とある。
三潴謙三 (みつま けんぞう, 1852-1894) は医師。芝警視病院長などを歴任している。
冒頭の例言に、"大學醫學部教師獨乙國博士チーゲル氏本校生徒ニ講授ノ爲メ纂輯スル所ノ國政醫論スターツ,アルツナイクンテ
ト題スル一書ヲ得タリ ... 同氏ニ乞テ之ヲ象譯シ以テ世ニ公ニス" とある。
チーゲルは 明治10年から16年まで東京医学校(後の東京大学医学部)の御雇教師だった Ernst Tiegel (1849-1889) のこと。
帰国後の消息はよく判らないが、1889年にスイスのバーゼルで亡くなっている。スターツ,アルツナイクンテは、Staats Arzneikunde だろう。
第一巻の標題紙は "國政醫論 巻一 | 衞生學之部"。第三巻の奥付は下記の通り。2ページに亘っている。
明治十二年九月十九日版權免許
譯校兼出版人 東京府士族 三潴謙三 東京本郷區湯島天神町壹丁目九拾四番地
譯者 東京府士族 谷口謙 東京神田區三崎町二丁目拾番地
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發兌書肆
東京馬喰町二丁目 島村利助
同 日本橋通三丁目 丸屋善七
定價六十錢
検印紙は第一巻標題紙左下に貼られている。
縦長方形、飾り枠内に "三潴謙三藏版印証" の字が読める。丸い割印があるが、判読できない。
「國政醫論」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/836877. 最終閲覧確認 2025.08.15]
[2025.08.30 記]
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