初期検印紙調査メモ [国立国会図書館デジタルコレクション]. 盛化堂(明治16~20年)

盛化堂の社主、長島為一郎の経歴はよくわからない。
「鴻巣市史 資料編6」によれば、1896年の郡会議員選挙で鴻巣町の議員に選出されている。
長島の出版活動については、稲岡(1986) 「明治前期教科書出版の実態とその位置」(出版研究 ; 16, p. 72-125) に詳しい。
盛化堂の出版物には検印紙が貼られているものがある。国立国会図書館デジタルコレクションで確認できた一番古いものは「初學生理書字引」。
見返しは "塩原惠助先生編 坪井為春先生閲 | 初學生理書字引 全 | ●●所有 盛化堂蔵版"。
●●の部分は検印紙の下に隠れているが、おそらく "版權" だろう。奥付は下記の通り。
明治十六年五月九日 版權免許
仝 七月 出版 定價二十錢
編輯人 新瀉縣平民 塩原惠助 武蔵國北足立郡浦和宿一番地寄留
出版人 埼玉縣平民 長㠀為一郎 武蔵國北足立郡鴻巣驛百廿五番地
發兌書林 吉川半七 ... [他9店省略]
検印紙は見返し左上部に貼られている。
飾り枠があり、上下右左に "埼"、"玉"、"長"、"島"、中央の文字は "盛化堂藏版檢閲章" と読める。
下部飾り枠外に、小さな字句(おそらく製版社名)が見えるが判読できない。割印は "長島之印" の丸印。

同じ検印紙が、「萬民必携證願届書式」(明治十七年二月出版)の奥付(割印は "長島章")、
「三字經略解」(明治十七年二月出版)の奥付(割印は "武県鴻巣驛書肆盛化堂長島藏版印")、
「訓點謝選拾遺 下」(明治十七年四月出版)の奥付(割印は "武県鴻巣驛書肆盛化堂長島藏版印")、
「廣益玉篇」(明治二十年五月出版)の奥付(割印は "武県鴻巣驛書肆盛化堂長島藏版印")でも確認できる。

国会図書館デジタルコレクションの各資料のアドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2025.09.30]
「初學生理書字引」. [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/833709]
「萬民必携證願届書式」. [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/786639]
「三字經略解」. [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/853495]
「訓點謝選拾遺 下」. [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/896013]
「廣益玉篇」. [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/863273]

[2025.10.10 記]
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