異形の検印紙
切手と同様にほとんどの検印紙は方形である。
検印紙は、普通は大きな用紙に小さな図案を並べて印刷し、裁断して作成されるはずなので、
効率良く作業でき、材料も無駄の無いようにと考えると、四角形になるのは当然だろう。
(三角形や菱形、六角形などでも無駄なく印刷できるけれども、切り離すのが面倒だろうし、あえてそうする必要はなさそう。)
これは検印紙や切手に限らず、例えば収入印紙などの小さな紙片の印刷物やラベル等も同じだ。
最近は郵便切手でもキャラクター切手など、方形でないものがあるし、丸い名刺もあるようだが、
特にデザインに凝ったものとか、奇をてらった物以外は一般的ではないと思う。
そして検印紙にも、例外的に方形以外のものがある。
日本叢書索引 / 廣瀬敏. 東京武蔵野書院, 1939. より。

1940年前後に使用されている。円形は、方形以外の形の選択としては普通かな、と思う。
名家俳文集 / 佐々醒雪、巖谷小波校訂. 博文館, 1914.(俳諧叢書 ; 第5冊)より。

中央の文字 "發行之章" が逆さまになっていて、上下逆に貼られていることが判る。
丸形だと、貼る時に傾いてしまっても判りにくい。検印紙の下に藍色で山型の印が捺されているが、詳細不明。
確認した限りでは、後刷りには検印紙は貼られていない。なお、博文館は普通は方形の検印紙を使用している。
狩野探幽 / 野田九浦. 泰東書院, 1930. より。

検印紙として作成されたものではなく、既製品のラベル類だと思うが、楕円形の検印紙は珍しい。
小さな出版社は独自の検印紙を使用しないことも多い。縁の波型模様はエンボス加工されている。
小村壽太郎 / 黒木勇吉. 圖書研究社, 1941. より。

奥付を開いて目を疑った。なぜ丼?
おそらく型抜きのようなもので打ち抜いて作られたものだろうが、奇抜さは群を抜いていて、他に類例を見ない。
図書研究社の他の出版物の検印紙は、確認した限りでは普通の方形であり、
同社の小倉一郎著 「大東亞維新」 (1942) では、明らかに原稿用紙を裁断しただけのものが使われていて、
検印紙にこだわりが有るのか無いのかよく判らない。
印影の右下、検印紙からはみ出した部分が切れているので、検印紙貼付前に押印されていることが判る。
黒木氏は丼の絵が並んだ紙にポンポンと印を押していったのだろうか。ちょっと楽しそうではある。
[2025.05.30 記]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2025.