明治14年5月14日付で下記の文部省布達が出されている。
文部省出版飜刻許可ノ圖書中飜刻人ノ姓名住所等ヲ掲ゲス全ク原刻ニ擬シテ發賣候者有之唯成規ニ違フノミナラス其書誤脱極メテ多クシテ
教育上弊害ヲ及ボス不尠候ニ付向後本省出版ノ書ニハ每册見返シノ端ニ見本ノ如キ印紙ヲ貼用シ發行可致候條飜刻人ノ姓名住所等ヲ
掲ケサルモノト文部省ノ印紙無之モノトハ都テ僞刻ト認メ教科用ニ充テサル樣豫メ管下ヘ諭示可致此旨相達候事
以降、文部省が出版した図書には印紙が貼付されることになる。一例として調査したのは 「幻燈用 觧體圖略説」。 洋装、1冊。
標題紙は "明治十四年十月印行有板權 | 幻燈用 觧體圖略説 | 文部省編輯局"。
独立した奥付ページは無く、最終ページに "明治十四年十月三日出板板權屆" の表記がある。
検印紙
は標題紙左上の空白部に貼られている。40 × 35 mm.、版面 36.5 × 31.5 mm. 目打あり、平版。茶褐色単色。
楕円枠上部に "文部省編輯局印行之證" とあり、枠内に地球儀、帙入りの和本、開かれた洋装本、論語と千字本の巻物、インク壺に挿された羽ペン、
枠外には星、矛、槍、弓矢、釣り竿と魚籠が描かれ、枠外下部に小さく "大藏省印刷局石版製" とある。
割印は "文部省" の楕円印だが、他の例では "文部省編輯局" の楕円印が押されている。
明治13年3月に設置された文部省編輯局は、明治23年に廃止となった。
図書編集や出版などの業務は総務局図書課に移され、それに伴って検印紙も変更されている。
調査したのは 「萬國歷史」。 洋装、1冊。標題紙は "萬國歷史 | 文部省圖書課"。
奥付は以下の通り。
明治二十四年九月三十日出版
版權所有 文部省圖書課
發賣所 東京市京橋區銀座壹丁目二十二番地 大日本圖書會社
同 大坂市東區上難波南ノ町七十二番屋敷 同支社
(定價金九拾錢)
検印紙
は同じく標題紙左上の空白部に貼られている。41 × 38 mm.、版面 36.5 × 31.5 mm. 目打あり、平版。茶褐色単色。
図案は全く同じで、目打ちは細かい。表記は "文部省圖書課印行之證"、"大藏省印刷局製" に変更されている。割印は "文部省圖書課" の楕円印。
この印紙がいつまで使用されたか調べきれていないが、明治36年頃からは "文部省圖書發行許可證" の表示のある別デザインのものが使用されているようだ。
[2025.10.30 記]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2025.