検印・検印用紙覚え書き. III. 日本以外の検印、検印用紙
外国(欧米圏に限らず、イスラム圏やインド、東南アジア圏も含めて)の出版物では、
出版者とその住所、出版年、版権表示等のいわゆる出版情報はタイトルページの裏に表示されるのが普通である。
巻末に表示する出版社も無いわけではないが、かなり少数派である。
もっとも、美術作品の図集や展覧会の図録などでは、デザイン性を考慮してのことだろう、巻末に表示されていることも多い。
出版情報を巻末のページに奥付としてある程度決まった形式で表示するのは、ほぼ日本、中国、韓国、北朝鮮の書物に限られる。
奥付は元をたどれば漢籍に見られる刊記に溯ることができるので、いわゆる漢字文化圏に共通して見られるのは当然だろう。
検印用紙は日本独特のもの、と一般には言われている。しかし韓国の出版物には時に検印用紙が貼付されていることがある。
おそらく日本統治時代に始まると思われるが、現在の韓国で検印や検印用紙について法的な根拠があるかどうかは知らない。
日本では昭和30年代頃から少なくなり、現在ではほぼ完全に廃れているが、韓国の出版物では最近のものでも比較的良くみられる。
いくつか例を挙げてみる。
[例1]:
표준 중세국어문법론 / 고영근. 집문당, 2010 (2012刷). の奥付。印影は漢字表記で「高永根」。
[例2]:
국어음운론 / 이기문, 김진우, 이상억. 學研社, 2000. の奥付。印影は「金李」となっているが、著者金氏と李氏を一つにまとめた印である。
[例3]:
「大明律直解」吏讀의語末語尾研究 / 姜榮. 國學資料院, 1998. の奥付。省略されることがあるのは日本と同じだ。韓国でも「印紙」と呼ばれている。
検印用紙のデザインは単純なものが多く、日本の様に凝ったものは少ない。図柄がある検印用紙の例を挙げる。
[例4]:
言語学概論 / 許雄. 正音社, 1965. の検印用紙。
[例5]:
韓國通史 / 韓㳓劤. 乙酉文化社, 1974. の検印用紙。
同様に日本が戦前統治していた台湾にも検印用紙が残っていても良さそうだが、まだ実例を見ていない。
(2021.02.18 記)