Catinella olivacea

Catinella olivacea

Catinella olivacea (Batsch) Boud.
カティネラ オリヴァケア "オリーブビョウタケ"。9月21日撮影。

[特徴]
腐朽の進んだ朽木に単生、あるいは少数が群生する。 子嚢盤は椀型から平皿形に開き、無柄でやや広く基質に固着する。直径 3-7 mm.、子実層面は初めはオリーブ色から緑褐色でややつやがあり、後にはほとんど黒色になる。 縁はやや内屈し、細かい畝状の皺があり、暗黄褐色を帯びる。外面はほぼ平滑あるいは僅かに皺状、暗褐色、基部付近には毛状の菌糸が伸びる。 肉質は比較的丈夫で、KOH水溶液中で暗茶褐色の色素を、エタノール中で黄さび色の色素を溶出する。 -- 子嚢は円筒形、やや厚膜、先端は肥厚し頂孔は盲管状、メルツァー試薬に呈色しない。基部にはかぎ形構造がある。8胞子(稀に4胞子)を一列に生じる。85-92 × 5.7-6.0 μm. -- 側糸は糸状、無色、まばらに隔壁があり、分岐する。径 2.0-2.8 μm.、先端はわずかに膨らみ、黄褐色のヤニ状物質が付着する。 -- 子嚢胞子は楕円形ないし舟形、あるいは僅かに左右不対称でスリッパ形、緑褐色、ほぼ平滑。上半がやや大きく、上端は僅かに尖り、中央付近でややくびれるものが多い。2油滴を含む。8.2-9.4 × 3.4-3.8 μm. -- 托組織は大部分が丸みを帯びた薄壁の角形細胞よりなる。直径 40 μm. 程度までになり、外半の細胞にはオリーブ褐色のヤニ様物質が付着し厚膜に見える。 最外層の細胞は径 6-10 μm.、時に房状になる。基部付近からはやや厚膜で褐色の菌糸が伸びる。直径 7-11 μm.、分岐は確認できず、隔壁があり、緩やかに曲がりくねり、先端は丸い。

[コメント]
腐朽の進んだアベマキと思われる倒木の材部に発生していたもの。倒木上の背着性硬質菌の古い子実体と思われるものの上にも発生していた。 ブナ科等の広葉樹の朽木に発生するとされ、マツの腐朽木に発生する良く似た菌 (Catinella sp. no.1) は別種だと思う。 子嚢胞子表面は微細な疣状とされるが確認しづらい。 Korf (1959) は、日本産の本種についてアルコールで色素を溶出しない、と記しているが、京都産の標本では確認できる。 盤菌類に典型的な特徴である平たい皿型の子実体から、従来はハイイロチャワンタケ科 (Dermateaceae) に置かれることが多かったが、 Greif et al. (2007) によって Dothideomycetes に属する(但し目以下の分類学的位置は不明)ことが明らかになっている。 川口 (2016) では 仮称 「オリーブビョウタケ」 とされている。

[別図2] 9月21日撮影。やや若い子実体。

[参考文献]
Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1. Ascomycetes.
Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.
Durand (1922): The genus Catinella. (Bulletin of the Torrey Botanical Club ; 49, p. 15-21).
Greif et al. (2007): Ascoma development and phylogeny of an apothecioid Dothideomycete, Catinella olivacea. (American journal of botany ; 94(11), p. 1890-1899).
Korf (1959): Japanese Discomycete notes IX-XVI. (Bull. Nat. Sci. Mus. ; 4(4), p. 389-400).
川口 (2016): 山口県産きのこ類の採集・確認目録. (豊田ホタルの里ミュージアム研究報告書 ; 8, p. 21-163).

[初掲載日: 2021.01.06] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2021.