Dasyscyphella sp. no.3

Dasyscyphella sp. no.3

Dasyscyphella sp. no.3
ニセヒナノチャワンタケ属菌。11月4日撮影。

[特徴]
朽木に群生する。子嚢盤は有柄、椀形からほぼ平らに開くが縁はやや内屈する。径 1.5 mm. 程度まで。子実層は白色、外面も同色で毛状。 柄は細く、普通は子嚢盤の直径以下、白色で短い毛を生じる。-- 子嚢は円筒形、先端はやや円錐状になって肥厚し、頂孔はメルツァー液で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子を2列に生じる。62-72 × 5-5.4 μm. -- 側糸は太針状、先端は尖り、基部付近に隔壁がある。内容物は一様、径 2.5 μm. まで、先端は子実層と同じかあるいはわずかに(5 μm. 程度まで)突出する。-- 子嚢胞子は細楕円形、無色、薄壁、平滑、顕著な内容物は見られない。7.1-8.6 × 2.2-2.5 μm. -- 托組織髄層は無色薄壁の菌糸からなる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 45 μm. 程度まで、24 × 9 μm. までの無色薄壁の矩形状細胞からなる。 外面の毛は表面細胞から生じ、無色、薄壁、数個の隔壁があり、径 2.5-3.5 μm.、上半はわずかに細まり、先端は丸い。先端の1-2細胞の表面は平滑、下半は細かい無色の顆粒状。 長さは 80-150 μm.、縁部の毛は直線的で比較的長いが、下面から柄部の毛は短く緩やかに曲がりくねるものが多い。

[コメント]
ブナ林内の広葉樹と思われる朽木下面に発生していたもの。国内既知種では Dasyscyphella montana Raitviir が近いが、この種は毛の先端が棍棒状に膨らむとされる。 Raitviir (2002) の検索表では、ヨーロッパからアジアにかけて分布する D. angustipila Raitviir に落ちるが、D. montana との形態的な相違点は微妙に思える。 D. montana は Hosoya (1998) に邦産の詳細な形態の記述がある。毛については "capped with and bearing amorphous resinous materials and crystals, sometimes fasciated by hyaline resin" とされているが、観察できなかった。 Dasyscyphella sp. no.1 とは同一種かも知れないけれども、 子嚢胞子の大きさが若干異なり顕著な内容物が見られないこと、毛の先端が膨らまないこと、などが異なるので分けておく。

[参考文献]
Hosoya (1998): Floristic and taxonomic study on the family Hyaloscyphaceae (Leotiales, Discomycetes) in Japan. (Ph.D. thesis, University of Tsukuba).
Raitviir (2002): A revision of the genus Dasyscyphella (Hyaloscyphaceae, Helotiales). (Polish botanical journal ; 47(2), p. 227-241).

[初掲載日: 2024.01.30] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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