Helvella sp. no.3

Helvella sp.no.3

Helvella sp. no.3
ノボリリュウ属菌。10月9日撮影。

[特徴]
子実体は有柄、子嚢盤は初めは閉じているが後にはやや浅い椀形に開く。さらに不規則に開いて周囲が波打ち、わずかに反転することもあるが鞍状にはならない。縁は内側に巻く。 直径 10-30 mm.、子実層面はややねずみ色を帯びた褐色からスレート色。外面は絨毛状で白っぽい。柄は円柱形、クリーム色、中実、表面は殆んど平滑あるいは細かな絨毛状。 高さは低く、普通は子嚢盤の直径と同程度かそれ以下で直径 2-4 mm. -- 子嚢は円筒形、先端は有蓋、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を一列に生じる。255-300 × 14.8-20.6 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり、内容は無色でほぼ一様か先端付近はやや泡状。直径 3.0-3.5 μm.、先端はやや膨らんで 6.0 μm. までになる。-- 子嚢胞子は広楕円形、無色、薄壁、平滑。大きな油球が一つと、少数の細かな油球がある。18.3-20.0 × 11.7-13.5 μm. -- 托組織髄層は径 3-6 μm. 程度の菌糸からなる比較的密な絡み合い菌組織で、所々に球状に膨らんだ細胞が混じる。 外皮層は厚さ 300 μm. まで、径 30 μm. 程度までの不整楕円形あるいは丸みを帯びた多角形の細胞からなる。 托表面の毛状被は、20-35 × 8-18 μm. 程度までの不整たる形の細胞が連鎖し、円錐形の束になって立ち上がり、高さ 200 μm. 程度になる。

[コメント]
広葉樹林の地上に散生あるいはやや群生し、公園などでも見られる。子実層面は典型的にはスレート色をしていて、外面はその色が透けて見えるので柄より黒っぽい。 幾つかの検索表をたどると、Helvella villosa あたりに落ちるが、H. villosa は Korf (2008) では H. fibrosa のシノニムとされている。 最近、幾つかの種がシノニムとして整理される一方で、海外では幾つかの近似種が発表されている。 さらに Skrede et al. (2017) では H. fibrosa に近い日本産の種として Helvella sp. 'JAPAN 1', 'JAPAN 2' が挙げられているので、 H. fibrosa あるいはその近縁種、として詳細な検討を待ちたい。 Helvella sp. no.1 としたものは同じ種かも知れないが、子嚢胞子が若干大型であることなどいくつか相違点があるので別扱いにしておく。

[別図2] 6月30日撮影。
[別図3] 10月15日撮影。

[参考文献]
Abbott and Currah (1997): The Helvellaceae: systematic revision and occurrence in northern and northwestern North America. (Mycotaxon ; 62. p. 1-125)
Dissing (1966): The genus Helvella in Europe with special emphasis on the species found in Norden. (Dansk botanik arkiv ; 25(1). p. 1-172)
Häffner (1987): Die Gattung Helvella : Morphologie und Taxonomie. (Beiheft zur Zeitschrift für Mykologie ; p. 1-165).
Korf (2008): Nomenclatural notes. 12. Untangling Hedwig's Octospora villosa: Helvella fibrosa comb. nov. (Mycotaxon ; 103, p. 307-312).
Skrede et al. (2017): A synopsis of the saddle fungi (Helvella: Ascomycota) in Europe - species delimitation, taxonomy and typification. (Persoonia ; 39, p. 201-253).

[初掲載日: 2007.07.17, 最終更新日: 2022.10.16] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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