Phoma sp. no.1

Phoma sp. no.1

Phoma sp. no.1
フォマ属菌。6月6日撮影。

[特徴]
葉に不整円形の病斑を生じる。病斑は褐色、径 5 mm. 程度まで、周辺部は黒褐色になる。病斑内に分生子殻がやや環状に形成される。 分生子殻は寄主組織中に埋生する。扁球形、黒褐色、径 170-320 μm.、高さ 100-200 μm. 程度。表面細胞は径 10 μm. 程度までの厚膜褐色の多角形細胞からなる。 上端は葉の表面側の表皮を破って現れ、頂部に孔口がある。孔口はほとんど突出せず、径 30 μm. 程度。-- 分生子形成細胞の詳細を確認できなかったが、分生子殻内壁の全面に形成されるようである。-- 分生子は楕円形、無色、薄壁、平滑、比較的大型の油球を2個含む。6.8-9.2 × 2.8-3.5 μm.

[コメント]
ヤブカラシ (Causonis japonica) に発生していたもの。 ヤブカラシはブドウ科なので Phyllosticta ampelicida だろうと思って採集した。 肉眼的にはちょっと様子が違うように感じたが、検鏡したら胞子が全然異なっていた。 Phoma 属か、その近縁属の菌だろうが、日本植物病名目録(日本植物病理学会, 2023.8)のヤブカラシの項には収録されておらず、最初の手掛かりが掴みにくい。 Boerema らの一連の論文を読みかけたが、近縁属や種の多さ、転属や再記載の量に圧倒された。同定は諦めて、フォマ属の菌としておく。 日本産菌類集覧(勝本, 2010)には、ヤブカラシの葉に同様の病斑と分生子殻を生じる菌として Ascochyta cissi N. Naito が挙げられている。 Naito (1940) に拠ればこの菌は京都市内で採集されたもので、分生子殻がやや小型で分生子は隔壁を生じるとされるので別種だろう。 この学名は Mel'nik (2000) には挙げられておらず、原記載以外に言及した論文を見つけられない。 記載にある採集地(岩倉)周辺も含めて、あちこちで相当数のヤブカラシの群落を調べたが、該当しそうな菌を見つけることができなかった。

[参考文献]
Mel'nik (2000): Key to the fungi of the genus Ascochyta Lib. (Coelomycetes). (Mitteilungen aus der Biologischen Bundesanstalt für Land- und Forstwirtschaft, Berlin-Dahlem ; 379).
Naito (1940): Notes on some new or noteworthy fungi of Japan. (Memoirs of the College of Agriculture, Kyoto Imperial University ; 47. Phytopathological series ; 9, p. 45-52).

[初掲載日: 2024.08.25] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2024.