Scutellinia sp. no.10
Scutellinia sp. no.10.
アラゲコベニチャワンタケ属菌。5月20日撮影。
[特徴]
子嚢盤は地上に群生する。やや肉厚の椀型から平盤状に開き、直径 7 mm. 程度まで。
子実層面は朱色を帯びた赤色。縁は全縁、僅かに盛り上がる。外面は淡色、縁部には短い剛毛が密生し、下面には比較的疎な短い剛毛を生じる。
柄は無く、やや広く基質に固着する。--
子嚢は円筒形、有蓋、メルツァー試薬に呈色せず、基部は細まり小さく2叉状になる。8胞子を一列に生じる。243-314 × 21.4-27.0 μm. --
側糸は糸状、基部付近で分岐し、隔壁がある。径 3.4-4.5 μm.、先端は棍棒状に膨らんで径 11 μm. 程度までになる。内容物はほぼ全長に亘って淡橙色。--
子嚢胞子は球形ないし亜球形、無色、表面は細疣状、内容物は泡状。疣を除いて直径 17.0-20.0 × 16.5-18.5 μm.。
疣状突起は先の平らな(側面から見ると四角形に見える)円柱形、径、高さともに 0.8 μm. 程度まで、互いに連絡せず、ほぼ一様に分布する。--
托髄層は径 12 μm. 程度までの菌糸からなる絡み合い菌組織、
外皮層は厚さ 200 μm. 程度、直径 20-60 μm. 程度の無色薄壁のやや縦長の多角形菌組織からなり、皮層深部から剛毛を生じる。--
剛毛は褐色、厚膜、少数の隔壁があり、先端は尖る。基端はやや細くなり、普通は単一、稀に二叉状になる。
縁部の毛は基部付近で径 22-35 μm.、長さは 350 μm. 程度までになる。
[コメント]
照葉樹林内の林道の路肩裸地に群生していたもの。
路肩の上にはコンクリートの廃材が積み上げられていて、土中の植物質の破片や腐植は少なく、粘土質だった。
比較的短い縁毛、球形の子嚢胞子、子嚢胞子の疣状突起は先端が平ら (truncate) 等の特徴は S. barlae に近いが、
Schumacher (1990) には子嚢胞子は "perfectly globose" とあるので少し異なるようだ。
S. barlae かも知れないとした
Scutellinia sp. no.7
と比べると、肉眼的には赤みが強く、子嚢胞子の疣状突起は小さい。
[別図2]
同日撮影。
[参考文献]
Schumacher (1990): The genus Scutellinia (Pyrenomataceae). (Opera botanica ; 101).
[初掲載: 2017.09.19]