Scutellinia sp. no.14
Scutellinia sp. no.14
アラゲコベニチャワンタケ属菌。9月28日撮影。
[特徴]
子嚢盤は浅い椀形から皿状、子実層面はややくすんだ感じの赤橙色、直径 4-10 mm.、縁は全縁、まつ毛状の長い黒褐色の剛毛がある。外面は淡色、短い黒褐色の剛毛がまばらにある。柄は無く、比較的広く基質に固着する。--
子嚢は円筒形、有蓋、メルツァー試薬に呈色せず、基部はやや急に細くなって2叉状になる。8胞子をほぼ一列に生じる。260-285 × 16-20 μm. --
側糸は糸状、隔壁があり、基部近くで分岐する。径 3-4 μm.、先端は棍棒状あるいは槍状に膨らんで径 8-9 μm. までになる。 全体にやや顆粒状で淡橙色の内容物を含むが、先端に近いほど淡色になり先端細胞ではほぼ無色になる。--
子嚢胞子は楕円形、無色、表面は疣状、19.4-20 × 11.7-12 μm.、内容物は泡状、疣はコットンブルーによく染まり、不整円形ないし楕円形あるいはアメーバ状、最大径は 2.5 μm. に達し、側面から見た形は低い山型で高さは 1 μm. 以下。底辺の一部が細く伸びて隣接する疣と連絡し不完全な網目状になることもある。--
托組織髄層は絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 160 μm. 程度、ほぼ無色の縦長い多角形細胞からなる。縁部の細胞は棍棒状ないし細楕円形になり、薄壁、淡色。
縁毛は外皮層の深部から生じ、最長 1700 μm.、基部付近の最大径は 35 μm. に達し、褐色、厚膜、隔壁があり先端はとがる。
末端はやや細くなって数本に分岐し、太く短い根状に拡がる。外面の毛もほぼ同様だが長さは短く、基部の分岐は少ないものが多い。
[コメント]
ブナ林内の朽木片に発生していたもの。外国の文献による検索表では Scutellinia colensoi あたりに落ち、当サイトで
Scutellinia colensoi
としたものとの明瞭な区別点はないが、胞子表面の疣状突起がやや大型で高さは低い点や、子実体の色調が微妙に異なるように思えるので、分けておく。
まわりにぽつぽつと見える黄色の粒状のものは Bactridium 属菌の分生子塊。湿った朽木上に発生し、低倍率のルーペで容易に確認できるほどの大型で棍棒形の分生子を形成する。
Bactridium 属は、遺伝子解析の結果からは Scutellinia 属等のピロネマキン科に近いとされているので、何らかの関係があるのかもしれない。
[参考文献]
Jeannerot (2019): European key to the genus Scutellinia. (Ascomycete.org ; 11(6), p. 297-308).
Schumacher (1990): The genus Scutellinia (Pyronemataceae). (Opera botanica ; 101).
Zhuang (2013): The genus Scutellinia (Pyronemataceae) from China with a key to the known species of the country. (Mycosystema ; 32(3), p. 429-447).
[初掲載日: 2021.08.13] //
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