? sp. no.52
? sp. no. 52
よくわからない盤菌類。4月21日撮影。
[特徴]
紫かび病菌の菌叢中に群生する。子嚢盤は薄い平板状、径 0.2-0.4 mm. 程度、半透明でほとんど無色だが、ルーペ下では寄主の菌体の色が透けて淡紫褐色に見える。
縁は全縁で薄く、外面は平滑、ほとんど柄は無く、紫カビ病菌の菌叢に固着し、周辺にはこの菌のものと思われる無色の菌糸がわずかに拡がる。--
子嚢は棍棒状、先端は著しく肥厚して(未熟な子嚢では厚さ 7 μm. 程度に達する)盲管状の頂孔があり、メルツァー試薬で呈色せず、基部にはかぎ型構造がある。8胞子をほぼ2列に生じる。25.8-35.8 × 5.4-7.2 μm. --
明瞭な側糸は認められない。--
子嚢胞子は細卵形ないし広紡錘形、無色、薄壁、平滑、中央あるいはやや下方に隔壁があり2細胞、隔壁部はわずかに括れ、上方の細胞がやや幅広い。小さな油球状の内容物が少量ある。8.5-10.9 × 2.5-3.1 μm. --
明瞭な托組織構造を観察できなかったが、菌糸状の細胞と、無色で径 2-4.2 μm. 程度の比較的厚膜でやや角ばった細胞が認められる。髄層の組織はゼラチン化はしていないようだが、少なくとも外皮層はゼラチン質に包まれているように見える。
[コメント]
春、アラカシ (Quercus glauca) 葉上の紫かび病菌 (Cystotheca wrightii)
の古い菌叢中(おそらく前年に発生したもの)に群生する。上掲の画像は霧吹きで湿らせた状態のもの。
乾燥時は半透明のフィルム状だが、湿らせると速やかに膨らんで柔らかくなり、子実層はツヤが出るので、全体がゼラチン質に包まれているのではないかと思うが、私の徒手切片技術ではこの微小菌の良好な切片を作成できない。
平滑な外面、菌寄生性等の特徴と合わせて考えると Calloriopsideae に属するものだろうか。
すす病菌 (Meliola spp.) に生じる Calloriopsis gelatinosa (Sacc.) Sydow は、生態的にも似ているが、特徴は一致しない。
紫かび病菌は公園や民家に植栽されたアラカシにもきわめて普通に発生するが、この盤菌は発生環境がかなり限定されるようで、市街地では見られない。沢沿いの林道等で採集しているが少ない。
[別図2]
4月21日撮影。乾いた状態の子実体。肉眼で発見するのはかなり難しい。
[参考文献]
Baral and Marson (2001): Monographic revision of Gelatinopsis and Calloriopsis (Calloriopsideae, Leotiales). (Micologia 2000, p. 23-46).
Pfister (1976): Calloriopsis and Micropyxis: two Discomycete genera in the Calloriopsideae trib. nov. (Mycotaxon ; 4(2). p. 340-346).
[初掲載日: 2021.06.04] //
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