宇田川準一 (1848-1913) は洋学者。東京師範学校教諭等を経て陸軍省に入り、参謀本部で測量技師を務めた。
調査したのは宇田川準一譯「物理全志」。洋装、1冊。
George Payn Quackenbos と Adolphe Ganot 原著の2書を折衷、翻訳したもの。
標題紙は "宇田川準一譯 | 平岡盛三郎閲 | 物理全志 完 | 板權免許 明治十二年三月 煙雨樓藏"。
右下部に "飜刻不許" の黒印が刷られている。また、下部に小さく "知新堂銅刻" とある。
目次標題は 「改正物理全志」。初版は明治8~9年に和装十巻10冊で出版されている。
奥付は以下の通り。2ページに亘っている。
明治十二年三月十九日 版權免許
譯者 東京府士族 宇田川凖一 神田區小川町壹丁目七番地
出版人 山口縣士族 諸葛信澄 北豊島郡西ヶ原村千二十二番地
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賣捌 青山淸吉 小石川區大門町廿五番地
石川治兵衛 日本橋區馬喰町二丁目壹番地
書肆 福田仙藏 神田區通新石町廿一番地
検印紙
は標題紙裏の右上部に貼られている。丸形、径 28 mm、版面径 27 mm、ルレットあり、平版か。
小豆色単色、円形の二重装飾枠があり、中央に物理器具が3点描かれている。
内側の丸枠、網目模様内には出版人と書肆の名がそれぞれ右側に "モロクヅ"、左側に "フクダ" と記されている。
割印は丸印、判読できない。
なお、標題紙裏中央には飾り枠があり、その中に "烟雨樓藏版" の朱印が押されている。
諸葛信澄 (1849-1880) は教育者。文部省出仕から東京師範学校校長を務めている。
丸い検印紙は珍しい。また、標題紙裏という貼付場所も珍しいと思う。
描かれた器具は同書付図の第百十八、百二十一、百二十二圖から採られたもので、
後方(第百十八圖)はアルキメデスの螺旋ポンプ、前中央は(第百二十一圖)は浮沈子、前左は(第百二十二圖)は大気圧を観察する器具。
この図は George Payn Quackenbos の原著 "A natural philosophy" にある挿図を写したものだ。
(「物理全志」 の序文には1873年版のナチュラル フィロソフィーとあり、D. Appleton から出版された "Revised edition" と思われる。)
それぞれ原著の fig. 172 (p. 162. Archimedes' screw)、fig. 176 (p. 167. Bottle imps)、fig. 177 (p. 169) に当たる。
標題紙の四隅にも同様の器具がデザインされているので、検印紙を作成したのは標題紙と同じ知新堂だろう。
(知新堂については こちら も参照。)
国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている同書同版には検印紙は貼られておらず、
標題紙裏には "烟雨樓藏版" の朱印はあるが、押印箇所に飾り枠は無い。
また、奥付の日付が明治18年1月、出版人が諸葛信澄の子の諸葛政太となっている再版がある。
その標題紙裏には飾り枠と "烟雨樓藏版" の朱印があり、検印紙も同じものが貼られている。
アドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2026.01.30]
「物理全志」.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/829989]
「物理全志」 再版.
[国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/2387554]
[2026.02.10 記]
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