初期検印紙調査メモ. 有隣堂の証紙 補遺(明治10、12年)

有隣堂の証紙はここで触れたが、他の2例を国会図書館デジタルコレクションで確認できたので追加する。

まず一つ目。確認したのは「地形論」 四巻4冊。巻頭に "岩手縣圖書章" 印が押されている。
第一巻の見返しは "明治十年六月十九日版權免許 | 地形論 | 仝年十二月刊行"
奥付は下記の通り。
明治十年六月十九日板權免許
仝 年十二月刊行 定價六十戔
飜譯兼出板人 千葉縣士族 帆足義兼 神田區佐久間町四丁目廿四番地
發兌 山本榮次郎 神田區佐久間町三丁目三十七番地
仝 土屋忠兵衛 芝區柴井町十六番地
仝 須原屋茂兵衛 日本𣘺區日本𣘺通一丁目十五番地
仝 和泉屋市兵衛 芝區三島町九番地
仝 山形屋半兵衛 京𣘺區南傳馬町一丁目十番地
証紙は奥付上部左端に貼られている。
碁盤目に菱形模様があり、右に "東京書肆"、左に "有隣堂章" とあるもの。
割印は無く、碁盤目に合わせるように "一八三八 ハリミセ ハリンセ" と書かれている。
第二巻の見返しは "米國コー子ル著 帆足義兼譯 中村正直校正 | 地形論 巻二 | 明治十年六月十九日版權免許 仝十二年三月刊行 帆足氏藏版"
奥付は、刊行日が異なる以外は同一だが、"改定價四十錢" の朱印が押されている。
証紙は奥付上部左端、記入文字は "一八二五 ハリミセ ハリンセ"
第三巻の見返し、奥付は巻次が "巻三"、刊行日が "仝十二年四月刊行" とある以外は第二巻と同一。
証紙は奥付上部左端、記入文字は "一八二七 ハリミセ ハリンセ"
第四巻の見返し、奥付は巻次が "巻四"、刊行日が "仝十二年十月刊行" とある以外は第二巻と同一。ただし定価は四十戔に改められている。
証紙は奥付上部左端、記入文字は "一八二九 ハリミセ ハリンセ"

有隣堂の名前が奥付に無く、最初に刊行された第一巻の証紙の数字が一番大きいのが気になる。あるいは書店票として使用されたものか。
なお、国会図書館デジタルコレクション公開本で巻頭に "東亰圖書館藏" 印があるもの、京都大学附属図書館と同吉田南図書館の所蔵本には証紙は貼付されていない。

二つ目。確認したのは「日本農學捷徑」上中巻2冊。
上中下3巻本のはずだが、下巻は未見、確実な所蔵機関を確認できない。未刊だろうか。
上巻の見返しは "河原田盛美著 | 日本農學捷徑 | 明治十一年十一月出版 鴻文堂蔵版"
奥付は下記の通り。
明治十一年四月九日版權免許
著者兼出版人 河原田盛美 東京新小川町三丁目十三番地
發兌
東京新小川町三丁目十三番地 鴻文堂
仝 馬喰町二丁目 石川治兵衞
仝 南傳馬町 穴山篤太郎
廣島壹丁目 松村善助
長㟢引地町 鶴野常藏
神戸相生橋東 熊谷幸介
鹿児島縣下呉服町 德重直助
福島縣下會津若松一ノ町 齊藤八四郎
発兌者3人目の穴山篤太郎が有隣堂社主である。証紙は奥付上部左端に貼られている。
碁盤目に菱形模様があり、四隅に "東亰書肆"、右に "有隣堂"、左に "發兌章"、下に "T. Anayama" とあるもの。
割印は無く、碁盤目に合わせるように "七八● リセ" と書かれている。[●不明瞭]
中巻の見返し、奥付、証紙は上巻と同じ、証紙に書かれた文字は "七九● リセ"

各資料のアドレスは下記の通り。[最終閲覧確認日: 2025.09.10]
地形論 第一巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/1885659 ログイン必要]
地形論 第二巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/1885670 ログイン必要]
地形論 第三巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/1885679 ログイン必要]
地形論 第四巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/1885687 ログイン必要]
日本農學捷徑 上巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/839063]
日本農學捷徑 中巻: [国立国会図書館デジタルコレクション リンク先 https://dl.ndl.go.jp/pid/839064]

[2025.09.20 記]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2025.