初期検印紙調査メモ. 中邨秋香(明治17~年)

中邨秋香 (1841-1910) は国文学者、詩人。中邨の著作2点を調査した。
1点目: 小中邨清矩・中邨秋香編輯「日用文鑑」。和綴じ、上下巻2冊。
上巻見返しは "小中村清矩 中村秋香編輯 版權所有 | 日用文鑑 | 不二書屋藏梓"、枠外上部に "明治十七年二月新彫"。
下巻奥付は以下の通り。
明治十六年十月十二日版權免許
明治十七年二月 出版
編輯人 東京府士族 小中邨清矩 下谷區西黒門町十七番地
編輯并ニ出版人 静岡縣士族 中邨秋香 麴町區三番町七十一番
出版人 東京府平民 福田仙藏 神田區通新石町廾一番地
検印紙 は上巻見返し左上部、"毎部以此爲證" と書かれた下部に貼られている。32 × 32.5 mm.、版面 31 × 32 mm.、目打なし、平版に見える。
青色単色、東屋に置かれた机に向かう人物、背景には富士山と松が描かれ、屋内には "不二書屋 中邨" と書かれた額が掛けられている。
割印は "福田" の角印。

2点目: 中邨秋香著「古今集詳解」。和綴じ、四巻4冊。現物を確認できたのは一、二巻。
第一巻巻末の広告には三、四巻は近刊とあるが、やや遅れて明治41年に出版されている。
第一巻標題紙は "中邨秋香著 | 古今集詳解 巻の一 | 東京 文榮閣蔵版"。
第一巻奥付は以下の通り。
明治三十七年三月二十日印刷
明治三十七年三月廿五日發行 古今集詳解卷一奥附 定價金卅六錢
著作者 中村秋香 東京市本郷區駒込西片町十番地
發行者 前川亦三郎 東京市日本橋箔屋町十六番地
印刷者 三島宇一郎 東京市神田區表神保町二番地
印刷所 弘文堂 同所 電話本局二三一六番
発行所 東京日本橋區箔屋町一六番地 前川文榮閣
検印紙 は奥付上部の枠内に貼られている。32 × 33 mm.、版面 31 × 32 mm.、目打なし、平版に見える。
薄茶色単色、図柄は「日用文鑑」で使用されているものとほぼ同じだが、左下に小さく "第二版" とある。
割印は角印、不鮮明だが "著作權所有" だろう。
第二巻の発行は明治37年6月5日。奥付は日付、巻表示、定価(金四拾四錢)が異なる以外は同じ。
ただし "發行所" が "發所行" と誤植されている。同じ検印紙は貼られているが、割印は押されていない。

上記2種の検印紙の図柄は、よく見ると庭の木々の枝ぶりなど、細かな点が異なっていて、同一ではない。
富士山の上の雲や、中央にある丸窓の中の景色を比べると判りやすい。
人物は初版の方は女性に見えるが、第2版の方はむしろ男性に見える。全体に第二版のほうが粗く感じる。
なお、この検印の構図は、石村貞一編輯「明治新刻 國史畧」に貼られている検印紙とよく似ていると思う。

[2025.11.24 記]
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