漢字以外の検印
検印も一般の印鑑と同じで普通は漢字だが、検印専用に作られたと思われる印には漢字以外のものがある。漢字、ひらがな、カタカナ以外のものを挙げる。
[ラテン文字]
ラテン文字のイニシャルを使っている印は比較的多い。森鷗外も使用している。
伊波普猷(いは、ふゆう)の検印。沖縄考. 創元社, 1942. より。
田村栄太郎 の検印。日本工業前史. 東洋堂, 1943. より。
下島連(しもじま、むらじ)の検印。山下裁判. 日本教文社, 1952. より。
金子直吉 の検印。經濟野話. 巖松堂, 1924. より。
矢吹勝二 の検印。ドバマ / アマル・ラヒリ著 ; 矢吹勝二譯. 興風館, 1941. より。
山本勝之助 の検印。日本を亡ぼしたもの. 彰考書院, 1949. より。漢字とイニシャルの組み合わせ。
ラテン文字以外の文字を使用している検印はほとんど無く、実見できたのは各文字一例づつ。
[ギリシャ文字]
串田孫一 の検印。仏蘭西哲學雜記帖. 風間書房, 1942. より。ギリシャ文字で "ΜΑΓΩ"(マゴ)とある。
[キリル文字]
山之内一郎 の検印。ソヴェート法 / マゲロウスキー編纂 ; 山之内一郎, 北村純雄譯. 希望閣, 1931. より。おそらく山之内の頭文字 "Я"(ヤー)だろう。
[アラビア文字]
小林哲夫 の検印。インドネシアの回教. 愛國新聞社出版部, 1942. より。小林はオマル・ファイサルというムスリム名を持っていた。
[チベット文字]
金澤庄三郎 の検印。日鮮同祖論. 汎東洋社, 1943. より。金澤が編集したベストセラー辞書「辞林」にも使われている。
周囲の唐草模様の間、上下右左の順にチベット文字で "ཀ", "ན", "ས", "ཝ"(ka na sa wa)とある。
検印紙にチベット文字が書かれている例があるので挙げておく。
山喜房佛書林 の検印紙。サンスクリット文法綱要 / 岩本裕. 山喜房佛書林, 1979. より。"སངཀིབོ།"(sankibo)とある。
--- [おまけ] ---
検印では無いが、奥付に書かれた文字であまり例を見ないものを挙げる。
[ビルマ数字]。入竺比丘尼 / 村上妙清. 善念寺, 1944. より。非売品。通し番号だと思う。ビルマ数字で "179" とある。
[2025.06.17 記]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2025.
study2 を削除